何年か前から、「使わなくなった母の楽器を引き取って欲しい」「もう歳で弾くこともなくなったので」というご連絡を頂くことが多くなりました。
皆様、思い入れのある楽器や、お母様の大事な楽器なので、捨てるに捨てられないということで箏をお持ち込みになったり、引き取って頂けないかとのお電話を頂戴します。
箏は、桐の木で出来ていて、実は価値のあるのは購入から30年程までです。以降は、木の脂分が落ちてしまうので、音はしますが、言わば伽藍堂のような音になってしまいます。どんなに高価な装飾が付いていても、残念ながら同じことです。
一般の方は、ヴァイオリンの名器は200年経っても価値がありますので、箏も同じようにお考えになるようです。
楽器屋さんにも伺いましたが、実は今はそのような楽器がかなり出回ってダブついているようなのです。もしかすると、丁度バブル期にお買い求めになったものかもしれません。
ですが、既に30年経っていることになります。更にそれ以前の物はどんなに当時良い楽器だったとしても、お稽古箏になります。
ただ、糸さえ張り替えていれば、楽器としての役割は充分に果たしますので、中級くらいまでの方がお使いになったり、学校で数が必要な場合には充分です。充分過ぎるほどです。
「新品の箏にはなかなか手が届きません」というような方にも、丁度良いかもしれません。
楽器屋さん数件にお話伺いましたら、最近は、「処分費用です」と言って、逆にお気持ちを置いていかれる方もいらっしゃるとか。以上が現状のようです。
当教室も何面かそのような楽器を頂戴致しましたが、大体は始めたばかりの生徒さん用の貸箏や、出張稽古場に置き箏として利用したりになっています。
実は、頂戴しても、糸締め代金、古い楽器はどこか修理が必要だったりと、弾く状態にするまでに費用がかかってしまいます。
三味線も然り。大体は皮が破れた状態になっていますので、皮張り代というのもそれなりにかかります。
更に、着なくなったお着物の処分に困っておられるという方もいらっしゃることが分かって来ました。
お子さんやご親戚の方に、着物を着る機会のある習い事をしている方がいらっしゃれば良いのですが、誰もいらっしゃらないと、残された着物達はどうなるのでしょうか?
着ていたご本人がどうにかされれば良いですが、例えばご遺族が処分することになったら・・・
これも、捨てるに捨てられませんね。
ということで、私にも娘がおりますが、多分着物には縁がなさそうなので、ふと自分も身につまされた訳です。
これ以上枚数を増やして、タンスに残したままになったら・・・
先日のおさらい会にも、以前のお着物を着てみました。
少し若めのお着物ですが、着物というのもご本人の趣味が多分にありますので、自分で購入した物にはやはり愛着があるのです。精精気の済むまで、どのお着物も着ましょう!と思った年頭でした。
長々と書きました。お読み頂きありがとうございました。